学P10回目記念の特別企画「5人が語る、過去・現在・未来」。
これまで名桜大OBや沖大OB、参加大学の教授にお話を伺ってきました。でも、熱い想いを持って学Pに参加しているのは、学生や先生だけではありません!
今回お話を伺ったのは、沖縄ファミリーマートのおむすび、弁当、サンドイッチ等を中心に製造しているジーケイフーズ㈱の仲元辰雄さん。私たちが普段食べているファミマの商品を生み出す、商品の開発・営業担当です。
仲元さんを含めた商品開発担当者は、学生の想いを形にするキーパーソン。毎年いづれかの大学のチームに入って、学生といっしょに1つの商品を作り上げます。
商品開発者の目に、学Pは、そして学生たちは、どのように映っているのでしょうか? これまでとは少し違う視点のインタビューをお送りします。
実現が難しい商品もある。でも、彼らの理想をできるかぎり形にしたい
ー仲元さんが開発担当として学Pに参加され始めたのはいつですか?
私が学Pと関わり始めたのは、2008年の第2回目の学Pからですね。会社から「これから学Pのプロジェクトに協力します!」と初めてきいた時は、大学生と一緒にモノづくりができるのだろうか・・・。そんな不安も正直ありました。でも、実際にやってみるととても面白い企画ですよね。若い世代が考えることって、えっ!と驚くような想定外のことも多いんです(笑)。でもそれが逆に面白いですね。僕にとっても良い刺激になりますよ。学Pは表面的なことだけじゃなくて、専門的な開発から販売、広報まで幅広い経験をしてもらえるのは素晴らしい試みだと感じています。こんなことが学生のうちに経験できるなんて羨ましい。
ー仲元さんは学生とどんな風に関わられているんですか?
一番最初の商品開発会議から入らせてもらっています。僕らとの会議では、学生がまず「こういう商品を作りたい」という構想を持ってくるんですよ。
過去の学P商品開発会議の様子
ーその構想に、仲元さんがプロの目線で意見を言うと。
いえ、僕らはできるだけその構想をそのまま持ち帰って、1週間くらいかけて実際の商品として何パータンか作ってみるんです。1週間という短い期間なのでかなり集中して取組みますね。
ー最初からいきなり作るんですね!
そうなんです。そして2回目以降の会議では、実際につくってみた商品の形や味をチェックしたり、生産にかかえる費用も試算したりします。学生たちが「これだ!」という商品にたどり着くまで、最低でも4~5回くらいこの流れを繰り返しますね。
ー1つの商品ができるまでの道のりは長いですね……。ここだけの話、「これは無茶だ!」と思うような商品構想を学生が持ってくることってありませんか?
まぁ、ありますね。夢のような商品も(笑)。
ー夢(笑)!
夢、とまではいかなくても、実現が難しい商品はやっぱりありますね。例えば、ファミリーマートの商品って保存料や合成着色料を入れていないんですよ。例えば、アボカドでいうと劣化のスピードが早かったり変色しやすいので、安心・安全面も学生たちにも教えたりしています。
あとは、お母さんが一生懸命作るようなキャラ弁なんかもちょっと……(笑)。
ー厳しいですか?
手が込みすぎた商品は大量に作るのが難しい所もありますが、もし実現したとしても、それが販売価格にも影響します。高くなりすぎては、お客さんは買ってくれないことも想定しなければなりません。そのバランスを学ぶのも学Pなんです。
ー材料の持ち具合や製造過程を考慮して、商品を作らなければいけないんですね。
その上で、できるだけ学生の要望を崩さずに作るようにはしています。彼らの理想をできる限り実現させたいですし、“これは無理”って、学生にはできるだけ言いたくないんですね。
「できない理由」より「どうすればできるか」。仲元さんが学生から教えてもらったこと
ー仲元さん自身、学生から影響を受けて変わったことはありますか?
ありますね。仕事って、長く続けていると良くも悪くも慣れてしまうじゃないですか。そのうち経験則で「これはできる・できない」って、すぐに理由をつけて判断することができるようになるんです。
でも学Pでは、通常なら「これはできない」と判断するだろう商品案を、学生はどんどん持ってくるんですよ。
ー学生には仲元さんのような「経験則」はほぼないですもんね。
でも、学生の要望はできるだけ叶えてあげたい。だから「できない理由」ではなくて「どうすればできるのか」を考えるんです。
今まで使用が難しかった材料でも「1度試してみようか」と使用を試みることもあります。やっぱり無理だったりしますが、彼らの要望を通して「できなかったことをできるようにしよう」という動きは、こちら側にもありますね。
ー仲元さんにとってもチャレンジングな状況なんですね!
そうですね。「初心に返る」という意味では、毎回とても勉強させられます。
ーこれは学P関係なく、仲元さんが初心に返って作ってみたいチャレンジ商品ってありますか?
うーん、、、売価を全然気にしない商品なんかを1度作ってみたいなっていう夢は、見たことはありますね。日常使いのコンビニでは、高級志向は難しいと言われてますが・・・。
ー売価を気にしない商品。
例えば、極厚ベーコンの入ったすごく豪華なハンバーガー(笑)。800円くらいするかな、コンビニではなかなかありえない価格帯ですよね。そんな商品を店頭に出したらどんな反応がくるのか、ちょっと気になります。なかなか普段の仕事では試せないですが、学Pのようなチャレンジできる場ならやってみるのもアリかなーと……。
ー今後そんな商品作りをするチームも出てくるかもしれませんね。
まぁでも「実際その価格でお客さんが手に取ってくれるのか」という話し合いになって却下されそうですけどね。僕が商品担当だったら、「800円のバーガー作りたい!!」と僕みたいなことを言う学生がいたら戸惑いそうです(笑)。
過去の学P商品開発会議の様子、中央左が仲元さん
自分で作った商品を愛した学生。結果発表で男泣き
ー学生たちが学Pに取り組む中で、仲元さんが彼らの成長を感じることはありますか?
あります。友達同士で参加するチームも多いので、最初はなあなあした雰囲気でまとまりにくいんですよ。会議も話はバラバラ。あまりにグダグダだった会議では、ファミリーマートさんが「これは会議じゃない!」と学生たちに一喝したこともありました(笑)。それもいい社会勉強です。
でも、そんな経験を重ねてどんどんチームらしく、リーダーがリーダーらしくなっていくんですよね。口下手だった人が自信を持って発言するようになったり、会議をまとめるのが上手になったり、そんな成長過程が毎回よく見えます。
ー学生たちの成長、仲元さんはどんな気分で見ているのですか?
嬉しさはありますよね。「あぁ、成長しているんだな」って、我が子を見守るお母さんの気持ちがちょっとだけ分かります。あっ、お父さんですね(笑)
過去の学P閉講式・結果発表の様子
ー毎年いろんな思い出はあると思いますが、これまで特に印象的だったチームはありますか?
2009年、沖縄国際大学チームですね。僕がその年入ったのは「沖縄国際大学」チーム。そのメンバーの男の子が、結果発表でそのチームは2位になったんですけど、彼は結果を聞いて悔し泣きしていたんです。
彼は、商品に相当思い入れを持っていたんですね。「僕はこの商品を愛している」と言っていました。学Pでは販売期間が2~3週間あるんですけど、その男の子は期間中、毎日3食とも開発したお弁当を食べていたくらいです。
ーすごい愛情ですね。
勝負は、本当にギリギリでした。途中までそのチームが1位だったんですけど、最後に売上金額を他チームに抜かれてしまったんです。男泣きをするくらい、相当悔しかったんでしょうね。
ー彼の涙を見て、仲元さんはどんな気持ちになったんですか?
やっぱり「勝たせてあげたかった」という気持ちはありましたね。彼の想いも知っていたからすごく勝ってほしくて、正直僕も毎日こっそり計算していたんです。「たくさん発注が来てるから調子いいみたいだよ!」とヒントを醸し出したりして(笑)。
ー熱い気持ちになるのは学生だけじゃないんですね。
僕らより学生のほうが断然「勝ちたい!!」って気持ちが強いですけどね。その熱さにふれて、こっちまでグッとくるとはあります。
ー最後に、商品開発担当として学生たちにひと言メッセージをお願いします!
せっかくやるならおもいっきり楽しんでほしいですね。自分たちで商品を作って販売する機会ってなかなかないじゃないですか。後悔がないようにチャレンジして、泣くくらい愛がつまった商品を作ってください!
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ライター:真崎睦美
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