故郷沖縄の素晴らしさ、いとおしさを再確認。
“暮らしから生まれて暮らしに帰る唄”をこれからも届けたい。
2006年7月リリースの『アンマー』の大ヒットから、、その後もテレビドラマや映画の主題歌への楽曲起用、映画出演、ラジオ番組出演と全国で快進撃を続ける「かりゆし58」。ハートフルな楽曲で好調なCDセールスに加え、全国ツアーは即完売という人気沸騰ぶり。2月22日にデビュー10周年を迎える今年は「かりゆし58の年」と言っても過言ではありません。今月20日から始まる全国ツアーへの意気込み、10周年記念アルバムの内容、さらに沖縄ファンにだけ教えてくれたレアトークなど、ファンならずとも必見の内容てんこ盛りのインタビューをお届け!
―2016年2月22日、デビュー10周年を迎えられるとのこと。本当におめでとうございます。10周年を迎えるにあたり率直な感想をお1人ずつ教えてください。
3人:ありがとうございます。
前川真悟(以下シンゴ):“もう1回ゼロから”という気持ちで、初心に帰る節目だと思っています。“もう”じゃなくて“まだ”10歳。だから思春期にも差しかかっていないわけで。まだまだ子どもなんですよね。
宮平直樹(以下ナオキ):僕はこれまでの10年を振り返ることで、むしろこれから先の10年の長さを意識するようになりました。続けることの大変さとか、ね。
新屋行裕(以下ユキヒロ):実感はまだあんまりないんです…(汗)。でも、これから10周年記念のアルバムもリリースされますし、ツアーも始まるので、徐々に実感が湧いてくるのかな~って思っています。
―唐突ですが、この10年を振り返って「かりゆし58の私的3大ニュース」を発表してください!
■シンゴの解説
3位は2009年に出演した、とあるフェスで大トリの桑田佳祐さんの隣で歌わせてもらえたこと。5万人の観衆が桑田さんの歌を待っていた瞬間の大歓声を浴びるという貴重な経験をしました。音楽で人が熱狂する最たる瞬間を体感させてもらい、多くの人に音楽を届けている人がここに実在するんだと改めて感動。桑田さんとの共演で“音楽にはまだ未開の地がある”と、その果てしなさにワクワクしました。
■ユキヒロの解説
昔からサメとか深海の生きものが大好きなので、3位はやっぱりサメのこと。1人で調べものするのが大好きです。
シンゴのちくり:そういえばこの前も、ユキヒロが沖縄美ら海水族館に行きたいって言うから飛行機の時間早めたのに“ホホジロザメの展示がなくなってる”って、でーじショックを受けてました。
そう!そうなんですよ!!世界初のホホジロザメの展示を沖縄美ら海水族館でやっていたのに、サメが3日で死んでしまって見られなかった…残念(涙)。ちなみに僕のイチオシは茨城県の大洗水族館!世界でも有数の珍しいサメが展示されていますよ!
■ナオキの解説
去年11月に2人目が誕生!上が女の子で下が男の子。女の子の時とは違う、一番近い同性のお手本として、仕事でもプライベートでも、自分が男として父親として、どっしり構えて動じないようにしようと意識が変わりました。
―メンバー全員がパパってことは、子育ての話もするんですか?
シンゴ:“子育てで今はどこに時間を注ぐべき?”みたいなことは共有しますね。“かりゆし58は3人でよくイクメントークしてる”ってぜひ書いといてください(笑)!
ナオキ:そうそう、“イクメンぶりがハンパない!”って(笑)
ユキヒロ:ププッ(笑)。
―全国で本当にめざましい活躍をされていますが、かりゆし58にとって「沖縄」とはどんな存在?
シンゴ:ありがたいことに人よりも多く音楽に関わる時間がある中で、プロアマ関係なく、どんなジャンルでも、俺が見てきた限り沖縄の音楽家たちは、世界中のどこよりも人と音楽との関係性が素晴らしいと感じる。音楽と最高な付き合い方を示してくれるお手本や導きがたくさんある島だな、と。あと、沖縄の音楽家の先輩や仲間たちと話していると、いろんな姿勢を教えてくれて、人間性の部分でも素晴らしさに気付かされますね。今は改めて自分の故郷を素晴らしくていとおしい場所だと感じています。これは歳を重ねて30代になったから気が付けたことかも。
ナオキ:僕らは今、東京に住んでいますけど、沖縄にいることや沖縄でライブをすることが一番、自然でしっくりくる。どんなに離れていても、やっぱり自分はウチナーンチュなんだなって思いますね。
ユキヒロ:僕もナオキと同じ。いろんなところへ行くことで、逆に自分の中の沖縄を感じることが多いです。
―10周年記念のベストアルバム「とぅしびぃ、かりゆし」に込めた想いを聞かせてください。
シンゴ:「誕生日おめでとう」という意味ですね。子どもが「いくつになったの?」って聞かれて「5さい」ってただ答えると「ひとりでね~?」って突っ込まれる沖縄の風習がありますよね。そして「おかげさまで5さい!」って言うように教えられる。父ちゃんと母ちゃんがいてみんな生まれるし、1人では大きくなれんからね。このアルバムもまさにそう。1つの音楽がこの世に生まれ、みんなに愛でてもらって歌い継いでもらったり、俺らが歌い続けられる場所を用意してもらえるのは、受け止めてくれる人がいないと無理なんですよね。だから“おかげさまで”“一緒にお祝いしよう”って想いが込められています。
―アルバムに収録する楽曲のセレクトやこだわった点は?
シンゴ:「この曲をこんなアレンジで聞きたい」とか「この曲が大好き」とか、俺らの10年を支えてくれたみんなのリクエストからも選曲しました。暮らしの中で、かりゆしの曲がどんな風に愛されてるか知ることで、曲も俺らも喜ぶし、それがまた前へ進む糧にもなるんです。今回、自分たちの過去をなぞりながら、デビュー当時の拙さや不器用な音に改めていとおしさが芽生えたり。演奏や歌の表現力が上がった今のかりゆしが、当時の曲をただ上手に上塗りすることは、逆にあの頃の想いや大事なものを薄めてしまわないかとも悩んだり。気付きや心の変化を受け止めながら、「かりゆし58の旅」をするように作ったアルバムは、すごく愛着のある1枚になりました。
ユキヒロ:以前、BEGINの島袋優さんとスタジオでアコギの生セッションをしたんですが、その時の「生きてれば良い事あるみたいよ」という曲も今回のアルバムに入ってます。
シンゴ:知名定男さんにも今回協力してもらったんですけど、テイクをほとんど重ねないんですよ。「その“ヨレ”がいいんだよ」とか「初めてその曲に触った緊張感がいいんだよ」って言って、大体一発OK。「“いい音楽”と“よくできた音楽”は違う」って、すごく大切なことを教えてもらいましたね。
ユキヒロ:演奏の部分で言うと、昔、沖縄で録った「オリーブ」や「ウージの唄」を、また同じ嘉手納のスタジオで録れたことはうれしかったですね。とても感情が込められたし、こういう気持ちの高まりが、たぶん技術とかを超えて大事なんだと。
―沖縄のファンのみなさんにはどんな風に楽しんで欲しいですか?
ユキヒロ:いやもう、ちゃんと届いて欲しいなって思いますね。
ナオキ:ドライブのお供に車で聴いてもらうとかね。
シンゴ:ウンウン。いいね。
ユキヒロ:僕はもう単純に、みんなに歌って欲しいですね。よくヒロキ(中村洋貴・ドラム)とスナックに行くんですけど、やっぱりそこで島唄が流れてるんですよ。
―え?ユキヒロさん、スナック行くんですか?
ユキヒロ:行きますよ。っていうか食いつくの、そこですか(笑)?スナックで地元の青年たちによく歌われているディアマンテスとかBEGINの曲って、もうなんかすごくアツいんですよ。その中に僕らの曲が入るといいな~って思って。
ナオキ:歌ってる人いるんじゃない?アンマーとか。
ユキヒロ:そうだったらうれしいよね。みんながいろんなところで歌ってくれたらさ。
シンゴ:ウン。確かに!
―10年目の節目に、母校の小学校で花火大会をやりたいという構想がシンゴさんにはあるそうですね?
シンゴ:子どもの頃、俺の出身の東風平町(現・八重瀬町)では、花火大会が5年に1回ぐらいしかなくて。それ以外は渋滞覚悟で親の車に揺られて奥武山や海洋博公園に行くしかなかった。だから年に1回ぐらい地元で花火が見れてもいいかな~って。音楽って、形あるものを生み出すのは難しいけど、もし音楽が作りだせるものがあるとしたら、それは新しいミュージシャンだと思うんです。音楽を面白いと思う子が増えれば、音楽を次の時代へ導いてくれるはずって信じてるんですよね。花火が始まるまではBEGINやモンパチや俺らの音楽とか、先輩後輩入り乱れてボーダーレスに“暇つぶし”に音楽を楽しんでもらって、花火が上がる中、そこに人工降雪機で雪も降らせたい。夏のたった1日だけ花火と雪と音楽のファンタジーがあって、子どもたちの絵日記がその日はみんな同じ内容になったら面白くないですか?(笑)そんなミラクルが起こったら、子どもたちもきっと音楽をやりたいって思ってくれますよね。
―沖縄・桜坂セントラルを皮切りに、いよいよ全国ツアー「ハイサイロード 2006-2016~オワリ×はじまり~」がスタートしますね。ツアーに向けての意気込みを教えてください!
ユキヒロ:いつもツアーは“あっという間だったな”って思うんですけど、今回は10年目の節目!心の中で想いをかみ締めながら頑張ります!
ナオキ:今年は曲も気持ちも節目を意識して、ファンのみなさんと一緒に10年を振り返りつつ、これからのかりゆしの進むべき道も示せたらいいですね。
シンゴ:作品や歌詞が生まれるタイミングはどこなんだろうって改めて考えたら、人に出会ったり何か新しい出来事が起こったとき、経験が日記に綴られるように生まれていたとわかりました。ツアーの看板は10周年ですが、そこで感じたことが11年目からのかりゆしを作っていく。全国のみんなからたくさんエネルギーや新曲の種をもらいにいく気持ちで頑張りたい。収穫というよりはむしろ種まきの気持ちです。
―ドラムのヒロキさんの活動休止について、みなさんから直接沖縄のファンに伝えたいことがあればお願いします。
シンゴ:個性や性格、足並みも全然違う、かりゆしの凸凹感が俺はたまらなく好きで。この10周年を迎えるタイミングで、また足並みがズレるというのも、なんだかかりゆしらしいな~と感じています。10年続ける素晴らしさと難しさを行き来する中で、ヒロキが身を持って俺らにいろんなことを示してくれたと思っています。
ヒロキの休業は、1人の友達としてヒロキがどうすることがベストなのかをみんなで考えた結果。もし、この部分を忘れたら俺らは人の暮らしの唄は歌えなくなると思うんです。ファンのみなさんには心配をかけますが、手以外はすごく元気で、父ちゃん母ちゃんの畑の手伝いをしながら休養しています。良くなって戻ってくるまで待っていてくださいね。
―10年前の自分、10年後の自分に何か言葉を投げかけるとしたら?
シンゴ:先日、結成の頃やデビュー当時に友達が撮影してくれたビデオを、メンバーで一緒に鑑賞したんですけど、もうムチャクチャで(笑)。でもそれがすごくいいな~って思って。押しつけがましいことを言っていると思った自分の姿すら、とても一生懸命でいとおしい。だから10年後は「悩みながらも可愛いこと言ってるよ、お前!」って、45歳の俺が35歳の俺に言ってるはず。
ナオキ:10年前の自分にも10年後の自分にも「やってみなさい!」ですね。
ユキヒロ:僕はお酒の失敗が多いので(笑)、10年前の自分には「お酒はほどほどに!」
沖縄のファンだけにこっそり教えちゃいます。かりゆし58レアトーク!
■もしもアーティストになってなかったら、何になりたかったですか?
ユキヒロ:僕は子どもの時からの夢は魚屋ですね。魚に関わる仕事!
シンゴ:ユキヒロ、バンドでお金貯めて、海洋学科の分野に進もうとしてるんですよ!
ユキヒロ:沖縄美ら海水族館とか、結構募集してるんですよね(笑)。
ナオキ:僕はファミリーマート経営ですね!バンドで生活できてるのに、沖縄に帰るたびに親父に「一緒にやろう!食いっぱぐれないよ~」って言われます(笑)。結成20年目には、“ファミマとかりゆし”二足のわらじかも(笑)。
シンゴ:一度「びわ法師」にはなってみたかったんですよ。
ナオキ:びわ法師?まぁルックス的には合うよね。
シンゴ:著作権とかの縛りがなくて、紙芝居のおじさんみたいに街中で話したり歌ったりして、お金をもらうみたいな、ね。
―最後に沖縄のファンのみなさんにメッセージを!
ユキヒロ:10年間、家族や沖縄のみなさんに支えられてきたので、本当に感謝しかないですね。ありがとうございます!
ナオキ:実家、ファミリーマート小禄田原店をよろしくお願いします!
シンゴ:おかげさまで10歳になりましたが、まだ“10ちゃい”なので、バンドにとっての反抗期も思春期も青春時代もこれからです。ますます多感になっていくかりゆし58ですが、地元沖縄でいろんなものを感じさせてもらって頑張りたいと思います。
【プロフィール】
かりゆし58(かりゆしごじゅうはち)
左から宮平直樹(Gt)、前川真悟(Vo&Ba)、中村洋貴(Dr)、新屋行裕(Gt)。メンバー全員、沖縄出身。2006年7月、母への感謝の気持ちをストレートに唄った1stシングル「アンマー」で日本有線大賞新人賞を受賞。2016年2月20日(土)、全国ツアー「ハイサイロード 2006-2016~オワリ×はじまり~」が沖縄を皮切りにスタート。デビュー10周年記念ベスト盤「とぅしびぃ、かりゆし」も2016年2月22日に発売予定。ラジオレギュラー「てれこ~かりゆし58のかりっかりかりか(仮)」(FM沖縄日曜・21:00~ ※ORANGE RANGEと週替りで担当。かりゆし58初回放送は2/14)も決定!