今年も6月24日(日)にBEGINさんが主催する音楽の祭典「うたの日コンサート」が開催されます。
2015年に「うたの日コンサート」が行われた際も、BEGINのヴォーカルの比嘉栄昇さんにインタビューさせていただきましたが、今回3年ぶりに沖縄ファミマ(ファミマin)に戻ってきてくれました。
今年で18回目を迎える「うたの日コンサート」に向けた想い、そしてBEGIN30周年に向けた心境などを伺いました。
「うたの日コンサート」は出演者・お客様と一緒に育てていく祭典
– 今年で18回目を迎える「うたの日コンサート」が6月24日に開催されますがどのような心境ですか?
比嘉さん: フラットに自分の今の心境を話すと・・・今年のうたの日がどういう方向に向かっているのかというのを、俯瞰的に眺めているような感覚です。というのもこのイベントを自分たちでコントロールするっていうのはそろそろ違うのではないかと。出演者の人数が増えて、踊ってくれる方々も何百人もいて、自分たちは「うたの日」という”場所”を作って、みなさまをお待ちするっていうことなんだろうなぁと感じています。
– BEGINさん側が全部作るというより、出演者さんやお客さん達と一緒に作り上げていくような・・・もう「うたの日」というイベント自体を、みんなで育てていく生き物のようなイメージでしょうか?
比嘉さん: そうですね。うたの日を人間に例えると、もう幼稚園生くらいの年頃ですね。転んでも手を差し伸べちゃいけないぞ、みたいな気持ちがあるのかもしれません。全部を自分たちでやってはいけないみたいな。うたの日は、BEGINや有名なアーティストが出演するイベントというものではなくなってきているんです。今年も出演者の情報がアップされる前から「うたの日行くね!」って言ってくれる人たちがいるんですけど、(出演者ありきのイベントより)そっちのほうが大事だよなって思っていて。うたの日は単純に、みんなのものなので。
– 子供が大人になるように「うたの日」も次の段階に進んでいっているんですね
比嘉さん: そうそう。嘉手納には基地がありますよね。みんな毎日騒音で大変だと思うから1日だけでも「耳ぐすい」の日を作るんだ!ってやり始めてから6回目なんですけど、それだけを理由にやり続けていいのかなという想いを持つようになりました。それで去年は嘉手納町の人にもっと参加してもらおうと、カラオケ同好会やフォークソングをやっている方にも声をかけたりしました。もうね、素晴らしく盛り上がっちゃって。
おじいもおばあも、みんなで踊って楽しむ「マルシャショーラ」
– 前回(2015年)のインタビューで「うたの日」はプロの人だけが立つステージじゃない、みんなの目標になるようなステージになればいいと仰っていましたが、まさにそれが体現された形でしょうか
比嘉さん: そうですね。それで今年はというと、「マルシャショーラ(会場全体で踊って盛り上がるBEGINのメインステージ)」の時に、ただステージを見てもらうんじゃなくて、宮城姉妹のレッスンを受けたダンサー達がラジオ体操の時の先生のようにお手本となり、会場のみんなにダンスを教える。みんなが主役となって踊って楽しめる状況を作ってみたいなと思っているんです。
恋人同士だったら手を繋いで踊ったり、それぞれのお客さんが自由に楽しめるような、遊園地に行った時のふわっとした気持ちになるような異空間を作りたいですね。ダンサーの宮城姉妹に活動量計で測ってもらったんだけど、マルシャの運動量って30分の2ステージで5.8メッツ(※1)あって。これ、サンドバッグを叩いているのと同じくらいの運動量なんですよ。30分サンドバッグを叩くのはキツくてできないでしょ?でもこれがマルシャの中ではできちゃう。それを去年は90分やったんです(笑)
※1 メッツは身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当します。(厚生労働省webサイトより)
– 凄いですね・・!楽しくてできちゃうんでしょうか??
比嘉さん: そう。今年も1時間位はやると思いますが、運動量から距離を計算してみると、6〜7km分くらいはあるんですよ。音楽の中で時を忘れて楽しいひとときを過ごしているのに、マルシャのリズムが終わると夢から醒めたような気分になって・・・。
でも汗はかいているし、凄く運動しているっていう感じが今の時代にあってる気がします。無音のままサンドバッグを叩き続けたり、意識して何キロも歩くのはとっても大変だけど、マルシャだと3000~4000の人たちが楽しく無意識のうちに、それに匹敵する運動ができるんです。
じいちゃんばあちゃんも、孫も一緒に楽しめるというところに、新しい「うたの日」の関わり合いがでてきているような気もします。マラソンを走っている人を見ても健康にはならないけど、あなたが歩けば健康になる。だからマルシャの時に1日の運動量をここで補って、みんなで音楽で健康になろう!!というような想いですね。
BEGINが決めてない?!「うたの日」の出演者の決め方とは?
– 今回の「うたの日コンサート」もバラエティ豊かな出演者が予定されていますが、人選にはどんなポイントがあるのでしょうか?また、BEGINのみなさんとは、どのような繋がりがあるのでしょうか?
比嘉さん: 出演者に関しては、有名無名、さらにはデビューしている、してないとか関係なく『このうたを会場のみなさんに聞いてもらいたい』というのを大事にしています。あとは会場を包み込んでくれる「歌使い」のような人です。例えばKiroroが歌い始めると会場の空気がガラッと変わるんですが、こういうアーティストってなかなかいないんです。「うたの日」があるから、常に様々な良い人がいないか聞いたり、チェックしたりしています。
あとは若手のバンドやアーティストで、「これから成長していく」って時に発するエネルギーは特別だと思っているので、ぜひ「うたの日」に参加してお客さんに届けてほしいっていう想いがありますね。おじいおばあが喜ぶだろうなと思って、演歌歌手の方にもお声がけしてますね。
ありがたいことに去年出演してくれたアーティストから「今年はお客さんで行きます」って連絡があって、これはステージにあげろってことなのか?とも思ったり(笑)
アーティストに、どうやったら「うたの日」出られるのか聞かれることが多いのですが、みんなが思っている以上に「選んでない」からわからないんです(笑)
– 選んでない・・!うたの日の出演者は自然な流れに導かれて決まる・・ということでしょうか?
比嘉さん: そうそう。例えば2年前に出てくれた小野リサさんは、ブラジルの繋がりがあって・・。もともと僕らは坂尾英矩(さかお ひでのり / ブラジル音楽の第一人者)さんに『リズムをとにかく止めるな、リズムを止めると音楽の持ってる力を君たちはわかってないことになるよ』と言われてマルシャをやり始めたんです。
いつのまにか「音楽」は、テレビとかラジオの枠の中で、3分くらいで終わるのが普通になってしまいました。だけど、ブラジルのサンバカーニバルの音楽は止まりません。ダンサーが背負ってる羽根も重いし、ヒールも高いけど、リズムが止まらないから怪我もしないし疲れない。これは何も不思議なことじゃなくて人間が持ってる元々の力なんだと、坂尾さんに教わったんです。
そんな坂尾さんと小野リサさんのお父さんが友達で、その流れから自然に小野リサさんの出演が決まったということもありました。 だから自分たちが作った流れではなくもっと大きな「2018年なら、2018年なりの流れ」と「いろんな方との縁」でアーティストが決まってくるから、今どうやったらうたの日に出演できるかと聞かれると困るし、思っている以上にぼくらに決定権はないです(笑)。 一つだけ、出演できる可能性が高いのは、マルシャのダンスレッスンを受けたダンサーチームとスポーツメンコ(デングリー)大会、この2つはエントリーしたら出られるからおすすめですよ(笑)
– おお!ここなら誰でも可能性があるんですね・・!チャンスをありがとうございます!
これまでに県民4000人がCMに出演?!「国道508号線」と音楽の力
– 沖縄ファミリーマート25周年記念で楽曲提供された「国道508号線」。現在もCMとして使用していますが、今まで何名の方が出演されたと思いますか?
比嘉さん :おぉ〜・・待ってよ・・(真剣に悩んでる様子)・・・1500人?
– ・・・正解は4000名を超える方々がご出演されています!この参加人数を聞いていかがでしょう?
比嘉さん: まじで〜?!すごっ!本当に?!まさかこんなことになるとは想像もしてなかったです。この曲は飲み屋で酔っ払ったおじいが「元々は1号線だったわけよ!」ってくだを巻くっていう、たわいのない会話から生まれた曲だから(笑)
でも「世代を超えて、うちなんちゅのみんなで前に進んで行こうぜ」みたいな意味もあるから、子供たちにこんなに踊ってもらえて嬉しいですね。
みんなもこの歌を聴き慣れて、騙されている気がするんだけど「しぇいねんぐわぁ〜のくしぇが〜」という歌い出しから意味がわからない歌詞だし、歌詞としてやっちゃいけないことを凄くやったのに、全国のライブ会場でも盛り上がっているっていうのは、自分としては「みんな騙されているぞ〜!」って後ろめたさもあるんです(笑)自分の中でマニアックな歌だったのに、こんなに広まって理解ができないですね(笑)
でも、自分たちのライブでこの曲をいつまで歌うかっていう問題もあるんです。バンドとしては曲を作り続けることが存在意義だと思っているから。
例えばビートルズの素晴らしい歌はいくらでもネットでダウンロードできるけど、もう新曲は聞けない。そういう風に考えるとBEGINはBEGINなりに新しく作り続けないといけないって思いますね。
2回目の「うたの日」に出演してくれた忌野清志郎さんは代表曲をやりながらも常に新曲を背負ってる様がかっこよくて。その背中を見ながら思ったんですよ。だからこの曲をずっと歌い続けられる幸せを感じながらも、自分たちで決められることではないから、みなさんが「もういいよ」って言ったら即やめるかも(笑)
– みんな騙されているんですね・・(笑)ただ、私は県外出身なのですが、あのCMを初めて見た時は衝撃でした。沖縄のいいところが全部詰まっているような、爆発するような明るさというか。
比嘉さん: 不思議ですよね。あんなに明るく楽しそうに踊れるって(笑)これはあくまでも提案なんですが、これだけ踊るんであれば、ぜひ運動量をはかってほしいなと(笑)
例えば野球の練習をしていると「偉いね」って言われるけど、ギターの練習をしていても「楽しそうでいいね〜」って言われるでしょう。どこか休憩の為の音楽みたいな。いや、そうじゃなくて、おじいおばあは畑仕事の時になんでうたを歌ったの?きつい仕事を音楽が忘れさせてくれたでしょう?って。
高校生の時に土地改良のバイトをやっていたんです。今は機械があるけど昔は手作業でめちゃくちゃきつくて、どうしようって思った時に「石とりうた」っていう歌を作って歌いながら作業すると全然疲れなくなったんです。歌ってそういう力を持っていると僕は思います。だから「国道508号線」で踊っているみなさんも、1回これを運動量で見てみてもらって、楽しいだけじゃなくこんなに体にいいことしていたんだって実感してほしいですね(笑)
– ぜひ今後「国道508号線」を踊られるかたは運動量を量ってみてほしいですね!そして石とりうた、聞きたいです・・!(笑)
BEGINと共に歩んできた沖縄ファミリーマート
– 2020年で30周年を迎えるBEGINさんですが、30周年に向けて思うことなどありますか?
比嘉さん: 自分は、先のスケジュールは見ないんです。今日、明日、以上っていう生活をずっと続けているから。その積み重ねで30周年に突入していくんだろうとは思うんですが、役割として自分に何ができるんだろうってことを考えています。今の年齢だからこそここから始まる物語を紡いでいきたいなと思っていますね。
あと「おめでとう」みたいな雰囲気が苦手で(笑)BEGINが何をやったとかじゃなく、ファンのみんなも一緒に歩いてきたじゃないかって。だからBEGINに対しての感謝の言葉はいらないぜと。でも1年に1回誕生日が来るように、区切りも必要。
誕生日は自分の母親が命をかけた日だと思うから、その日におやじは何してたかな〜とか思う日なんですよね。そう思うと別に祝ってもらうとか、ケーキがないから寂しいとか子供の頃に思った感情も全くなくて。30周年もそれに近いというか。みんながいるから僕らも音を出せるわけだし、いつも通りの1日をみんな元気で迎えたいですね。
– 沖縄ファミリーマートも去年30周年を迎え、4年前(2014年10月)に、石垣島への出店も果たしました。比嘉さんは現在石垣島に戻られ生活されていると伺っていますが、沖縄ファミリーマートの思い出は何かございますか?
比嘉さん: もうありありですよ!(笑)今、僕が住んでいる石垣島にファミリーマートがないっていうのは考えられないし、大変なことなんですよね。離島に暮らす者としては日用品が揃うっていうのがすごく大きなことで。食べ物は畑や海でとれるけど、トイレットペーパーは?とか、子供が急にノートが必要ってなった時とか(笑)細かいいろんなことですごく助けられていてありがたいし、ファミリーマートはもう石垣島の中ではおうちみたいな感じになっていますね。
– お店というか、もう安心できる場所ですか?
比嘉さん: 安心度でいうと「親戚の家」くらいの感じはあります(笑)
– うれしいコメントありがとうございます!
沖縄のファンにメッセージ
終始あたたかい笑顔でインタビューに答えてくれた比嘉さん。「うたの日」はとにかく「みんなが主役」だからと、出演者とお客さんの垣根なくみんなで作り上げるという並々ならぬ強い気持ちと、「うたの日」を幼稚園生に例えるほどの愛情深さが印象的でした。
BEGINさんにも出演の決定権がないという中で決まった出演者の方々も、当日集まる観客のみなさんも「うたの日」の大きな流れの中で必然と集まってきた主役の一人一人なんですね。今年はどんな「うたの日」になるのか、そしてどのくらいの運動量になるのか!(笑)
それではみなさん6月24日(日)の「沖縄からうた開き!うたの日コンサート2018 in嘉手納」でお会いしましょう!
「沖縄からうた開き! うたの日コンサート 2018 in 嘉手納」チケット情報はこちら
取材・記事:鈴木サラサ