他にはないオンリーワンの「おきなわ新喜劇」
笑いで故郷・沖縄に恩返しを!
今年でコンビ結成20周年を迎えるガレッジセールのゴリさん・川田さん。7月5日(日)には、17年振りとなる単独ライブを東京で行い、大盛況を収めました。2015年3月、沖縄三越の跡地である「HAPINAHA」3階にオープンした劇場「よしもと沖縄花月」では、ゴリさんを座長とし、55年の歴史を誇る吉本新喜劇と沖縄の歴史・文化・風習を取り込んだ「おきなわ新喜劇」を上演しています。
日本のお笑い界の第一線で活躍しながら沖縄にも貢献しているお2人に、「おきなわ新喜劇」の裏話や沖縄への想いを伺いました。
─「よしもと沖縄花月」がオープンして数ヵ月経ちましたが、率直な感想を聞かせてください。
ゴリさん:最初に「おきなわ新喜劇」を立ち上げることになったとき、まだ劇場ができることは決まっていなかったので、年1回のペースで公演を行って、ゆっくり時間をかけて、泡盛の古酒(クース)みたいに熟成していきたいな、と思っていたんですよ。そうしたら、沖縄に劇場がオープンすると聞いてビックリ!スケジュールが合えば毎日でも公演したいと思いましたが、東京でも仕事があるので、今は毎週日曜と月曜の週2日、沖縄の舞台に立たせてもらっています。
年1回ペースで熟成させるつもりが、毎週公演できるようになったので、鮮度バツグンのボジョレ・ヌーボーみたいな「おきなわ新喜劇」をお届けできますよ。舞台を踏む回数が増えれば成長も早いですし、沖縄の若手もどんどん力が付いてきますから。365日、毎日観光客で満席になる大阪の吉本新喜劇の沖縄バージョンが、予定よりも短い期間で達成できるのかなという嬉しさはありますね。
おきなわ新喜劇DO YOU“シーミー”?公演より
─実際に「おきなわ新喜劇」を観たら、声を上げて笑ってしまいました。とても楽しかったです。
ゴリさん:生で見ることのできる環境ってやっぱり贅沢ですよね。舞台に立っていて、子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、一斉に肩を揺らして笑っているのを見ると、こちらの方が幸せをもらえます。なんだか幸せのギブ&テイクをしているような幸福感に浸れますね。
─よしもとの劇場は全国にありますが、他の地域と沖縄との違いはありますか?
ゴリさん:(沖縄ファミマの人気商品「ファミマプレミアムくちどけ贅沢プリン」を食べている川田さんを見て)では、プリンを食べ終わった川田から。
(スタッフ一同大笑い)
川田さん:これ、本当に贅沢なつくり!シロップかける前もおいしい!かけたら二度おいしくて、別の味が楽しめますね。さすが、モンドセレクション最高金賞受賞!
ゴリさん:違うの、違うの。他の劇場と「よしもと沖縄花月」の違いを聞いているの。プリンの話しじゃないの!
(お2人の楽しい掛け合いに、スタッフ一同大笑い)
川田さん: 「よしもと沖縄花月」には東京と大阪にはない、沖縄ならではの空気感がありますね。いい意味でのゆるさがある。カチャーシーを踊るとお客さんが一緒になって盛り上がるのは、やっぱり他の地域にはない沖縄独特の盛り上がり方ですよね。それに舞台を観ていて、普通に話しかけてくるお客さんもいますよ。
ゴリさん:それと、オチを先に言っちゃう(笑)他の地域のお客さんは、例えば箱の中に何が入っているのか何となくわかっていても、それについて声を出さずに見てくれる。でも沖縄の人は「あの箱の中、トカゲだよ」ってばらしちゃう。それが沖縄らしい。
「よしもと沖縄花月」は舞台と客席の距離がもともと近い劇場ですが、いい意味で沖縄の人の、人なつっこい県民性がより心を近くするんじゃないかな。だから、まるで自分が舞台に立っているかのように話しかけてきますね。
─そういう舞台はやりにくいですか?
ゴリさん・川田さん: (同時に)面白いですよ (笑)
ゴリさん:そのお客さんをいじったりして、逆にプラスにすると、より笑いは大きくなりますから。
─「おきなわ新喜劇」の台本に沖縄の要素を入れることは、最初から構想にあったのですか?
ゴリさん:そうしないとやる意味がない。沖縄に来たら、観光客のみなさんは必ず美ら海水族館に行きますよね。「おきなわ新喜劇」もそういう風になりたいんです。「沖縄に行ってきたよ」「それじゃ、おきなわ新喜劇、観た?」という会話が当たり前になるには、オンリーワンじゃなきゃダメなんですよね。
吉本新喜劇やテレビでは観れないものを!となったら、やっぱり沖縄らしさがないと。沖縄のことをあまり知らないお客さんも「おきなわ新喜劇」を観て、歴史や文化など、沖縄の知識に触れて帰ってもらえればと思っています。
─お2人は、以前から沖縄の歴史や文化に詳しかったのですか?
川田さん:全然わからなかったです。この「おきなわ新喜劇」が始まってから勉強をして、こういう歴史があったんだと知ったことも多いですし。例えば、三線は全部沖縄の材料を使っていると思っていたのですが、海外からニシキヘビの皮を輸入して作っていることも初めて知りました。
ゴリさん:初めて知ったことばかりですよ。台本を作るときも一から勉強して、台本に取り入れている感じです。例えば三線をネタにすることが決まったら、そこから三線の歴史を調べるんです。5つ盛り込みたい要素があったとしても、話が長いと勉強みたいになってお客さんが飽きてしまうと思うので、悔しいけれど3つに絞ります。その知識を聞いて「へー、そうなんだ」と思ってもらえた後は、もう九分九厘、笑ってもらおう!という感じで構成を組み立てていきますね。
─大阪のお笑いは、今や全国区になって素晴らしい文化だと思うのですが、沖縄のお笑いは地元の人にしかわからないことはありませんか?これから、大阪のように成長していくのでしょうか?
ゴリさん:それはたぶん、情報的な部分ですよ。沖縄のCMのフレーズが出てくるとか、おばあのカメーカメー攻撃のような沖縄独特の文化だったりとか。
笑いの構造って、基本的なことは全世界変わらないと思います。例えばコップの水を口からではなく、目から飲もうとするなど、常識と違うことをやるから笑える。だから、大阪のお笑いを標準語に直しても、同じように笑えると思いますよ。そのお笑いの構造のなかに、沖縄の歴史や文化を入れたり、沖縄のイントネーションを加えることが沖縄らしさを出すってことだと思いますね。
例えばノリツッコミをした後、「アイヤ、アイヤ」と言いながらカチャーシーを踊るという沖縄の要素を入れることで、沖縄っぽさが出るわけですね。そこでお客さんも笑ってくれると思うんです。もっと根本の沖縄らしさを演出できる方法が見つけられたら、僕らも最強の武器を手に入れたことになりますけど、今はそれを一生懸命考えながら作っているところです。
─そんな実験的なことにもチャレンジしている「おきなわ新喜劇」は、沖縄から全国を目指す若手芸人たちにとっても飛躍の場になるのかなと期待しています。
川田さん:そうですね。沖縄の若手芸人が1組でも全国に行けたら嬉しいですね。そうしたら劇場ももっと活性化しますよ。
ゴリさん:芸人の育成ももちろんですが、沖縄の子どもたちが「おきなわ新喜劇」を観てギャグをマネしたり、「大きくなったら、おきなわ新喜劇に関わりたい」と言ってくれるようになるといいですね。それは演者だけではなく、スタッフでも作家でもいい。そうすると沖縄の雇用も増えますし、どんどん「おきなわ新喜劇」の輪が大きくなっていく。そして観光客が「沖縄に来たら、おきなわ新喜劇を観なきゃね」となってくれれば、県経済の面でもより良くなるんじゃないかなと。そうなれたら沖縄の役に立てて、僕らもちょっと嬉しいですね。
─ご家族の反応はいかがですか?
川田さん:先日、ちょうどおかあが観にきてくれたんですけど、「あんた、思っていたより面白いんだね」って。20年頑張って、やっと認められました(笑) 沖縄のネタが入っていたので親近感があり、初めて見た沖縄の芸人も多かったらしく「面白い人、多いね」って言っていました。芸達者なうちなーんちゅが集まっているので、生の舞台をみなさんにも観に来てほしいですね。
─結成20周年おめでとうございます。これほど長い間、コンビ愛が続く秘訣は何かありますか?
(見つめ合って、首を傾げるお2人)
川田さん:たぶん“沖縄”っていう深い繋がりがあることが大きいと思います。お互い沖縄出身なので、東京に出て頑張って、また沖縄に帰って充電して、という感じなので。
ゴリさん:流れですかね。無理をしないことです。人生いろいろありますので、そこに身を任せたり反発したりを繰り返し、“時”の“流れ”に乗ったという感じじゃないですかね。
─これまで、沖縄出身のミュージシャンや俳優さんはいらっしゃいましたが、お笑いで全国デビューしたのはお2人が初だったのでは。そのプレッシャーはありましたか?
ゴリさん:沖縄を背負っているつもりはなかったですね。最初は沖縄を出さずに、ネタも標準語でやっていましたし。沖縄だからとか、沖縄のためにという気持ちはなかったですね。それよりも、自分のためという意識の方が強かったかもしれないですね、売れるぞー!みたいな。
川田さん:上京したての頃、沖縄を出すと恥ずかしいっていう気持ちがあったんですよ。あの頃は、方言を話したら違う意味で笑われるとか、そんな雰囲気を感じていたんですよね。でもその後、沖縄ブームがあって、逆に方言が喜ばれるようになって。それは、ありがたかったですね。
ゴリさん:今の沖縄は、全国の人がうらやましいと思う対象になりましたよね。安室奈美恵さんのように、沖縄の人は歌が上手くて、ダンスが上手で、洋服などのセンスもかっこいい。そして海がキレイで、異国情緒にあふれていて。沖縄は“いい位置”にある、そう見られているんじゃないでしょうか。
インタビューの合間に、県産マンガ「ファミマガ」を紹介。沖縄本の新たな形に、ガレッジのお二人も興味津々のご様子です
─沖縄のファンのみなさんにメッセージを。
ゴリさん:「おきなわ新喜劇」を観に来てほしいという気持ちもありますが、それ以上に一緒に「おきなわ新喜劇」を大きくしていきましょう!って感じです。沖縄観光の定番のひとつを目指していくには、沖縄に住んでいるみなさんの協力なしにはできないので、演者として、スタッフとして入ってきていただくのもいいですね。沖縄の人たちにとって夢のある場所になり、沖縄の良い財産になっていけたらいいなと思います。
川田さん:家族や友だちをはじめ、沖縄の方たちには、いろいろな面で助けてもらいました。だからこれから僕らができることで、少しずつ沖縄に恩返ししたいなって。それでみなさんが笑ってくれたら嬉しいです。結成20周年という節目を迎えた僕らも、原点に戻ってゼロからスタート!の気持ちで挑みますので、これからも応援、よろしくお願いします!
【プロフィール】
左から“川ちゃん”こと川田広樹(ツッコミ)と“ゴリ”こと照屋年之(ボケ)による吉本興業所属のお笑いコンビ。沖縄県那覇市出身。1995年結成。数々のバラエティ番組やドラマ、映画などに出演するほか、ゴリは沖縄を舞台にした映画『南の島のフリムン』『税金サイボーグ・イトマン』『ロクな人生』『やんばるキョ!キョ!キョ! 』では監督も務め、幅広いジャンルで活躍。2009年沖縄県より『美ら島沖縄大使』に、2013年『那覇市観光大使』にも任命。
【新着情報】第2回おきなわ新喜劇ツアー『空手フリムン一代!』も開催決定!
■日時・会場
9/21(月・祝) 沖縄市民会館 大ホール[15:00][19:00]
9/22(火・祝) 浦添市てだこホール大ホール[14:00][18:00]
9/23(水・祝) 名護市民会館大ホール[14:00]
10/25(日) 宮古島市 マティダ市民劇場[15:00][19:00]
※開場時間は各開演の30分前
■出演者
ガレッジセール、スリムクラブ、普久原明、城間やよい、チョンダラーズ、宮川たま子、どさんこ室田、大屋あゆみ、ありんくりん
■ゲスト
9/21、22、10/25 きいやま商店
9/23 渡辺直美
■チケット情報
【沖縄市公演・浦添市公演・名護市公演】 全席指定席 前売3,500円/当日4,000円(小中学生 前売2,500円/当日3,000円)
【宮古島公演】 全席自由席 前売3,500円/当日4,000円(小中学生 前売2,500円/当日3,000円)
※ファミリーマート店舗(店内Famiポート)でも直接販売