道を歩くと誰もが振り返る。
目があうと照れたようにはにかんで目をそらす。
信号待ちの車から若いにーにー(お兄さん)が微笑みかけ、
向かいの道路から子供たちが羨望の眼差しで指をさす。
ブエノチキンのある小さな町、浦添市。
ここでは私が歩くと誰もが笑顔で振り返る。
町中の視線を受け止めながら背筋を伸ばし
颯爽と風を切って歩いていると
向こうから杖をついてゆっくり歩いてきたお婆さんが
すれ違いざまに立ち止まり、視線を合わせてこう言った。
「このチキン野郎!」
そう、私のユニフォーム。
ユニフォーム。
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そう、お店や企業の顔となる大事な大事な一枚。
沖縄ファミリーマートは紺地のシャツに青と緑のラインが爽やかなロゴマーク、
そして真っ青なジッパーがポイントの一枚。
決して「コンビニ野郎」とか「ファミマ上等」とか
そういった類のセリフはデザインされていない。
そういったセオリーを程よく無視した私のユニフォーム。
店内はもちろん、近所の銀行にもスーパーにも、
もちろんファミリーマートにも保育園のお迎えにも、
なんなら東京出張にも、この一枚。
ちっちゃいくせに(私めの身長147cm)
こんなTシャツで偉そうに歩いてるんだから、
道行く人が思わず見るのも無理はない。
信号待ちの車から若いカップルが可笑しそうに後ろ指をさし
道行く中学生にはコソコソと噂され
すれ違うお婆さんに「あんた、なんねこの服は」と問いただされるが、
私はこれを最高の勝負服と位置付けている。
(ラジオ番組Honda Smile Mission 取材のルーシーさんも無理やり)
(周りはスーツだらけの東京出張にも)
着始めた理由は別にあるが
これを着ていると着ていない時よりも注目度倍増、
道を歩くだけでいろんな人が気にかけてくれる。
「すごいTシャツですね!」
「チキン野郎ってどういう意味ですか?!」
「僕も着たいです!」
そこですかさずPR。
「私は浦添市で『ブエノチキン』という
チキンの丸焼き専門店をやっていて・・・」
「チキン野郎というフレーズは『軟弱者』という意味で使われますが
私はチキン屋なのでそれを『強者』の意味に変えたくて・・・」
そういう話を聞いた相手が
一人でもブエノチキンに興味を持ってくれれば、
一人でもお店に足を運んでくれれば、
これほどありがたいことはない。
Tシャツ一枚で会話が始まるなんて、
オバーが話かけてくれるなんて、
すてきじゃないか!素晴らしいじゃないか!
無料でできるPRに味をしめた私は
この一着をいろんな場所で着まくって浮きまくっているが
4年前に彼氏ができた時、さすがにちょっと躊躇した。
こんなに女を捨ててる私でいいのか?
首元にパールのほどこされた
パステルカラーのニットでも着た方がいいのでは?
思わず問うたが、返ってきた答えは
「ニワトリの着ぐるみ着るぐらい振り切って生きてくれ」
この人となら人生どこまでも走っていける。
そう確信したその人は今では愛する旦那さまとなり、
3年前には「アサノジュク」という塾を起業し
先輩社長として迷いだらけのヒヨッコ社長を
一番そばで叱咤激励してくれている。
(旦那さまも違和感なく着用)
広告予算のない小さな小さなお店、ブエノチキン。
お洒落も恥も捨てて
自らを広告媒体として切り売りしているが
この頃さらにインパクトのある強敵も現れたので
おちおち落ち着いてはいられない。
(着ているのはモガメン屋台を営む茂上氏)
強敵、それは週刊ファミマガにも同じく連載している
「ナオキ屋」Tシャツ!!!
(黄色い声と雷が飛び交う沖縄の夜)
ナオキ屋Tシャツと雷メイクが
巷を席巻しそうな気がして悔しいので
こちらも負けじとニワトリの着ぐるみでも発注しようか。
そんなことを考えつつ
ファミチキとブエノチキン、
チキンをこよなく愛するもの同志
今日もチキンと、いや、キチンと営業中!