沖縄本島第二都市の沖縄市、「コザ」といったらどんな印象を持っていますか?独特なカラーが強いとか、外国人が多い街、という意見もあるかとは思いますが、沖縄全土からも海外からもひんちゃ~まんちゃ~(ごちゃまぜ)にした、チャンプルー文化を代表する魅力ある街であることには違いありません!
30万人もの動員がある全島エイサーまつりをはじめイベントが多く開催されており、音楽の街としても知られていますよね。
何もかもを吸収して戦後にめざましく発展したコザの街。その独特な文化も時代とともにまた新しいものに変わっていく雰囲気が感じられます。そんな胎動を支える底力となっている、残したい伝統的なコザの楽しみと新しいコザの一部をわかりやすくご紹介しましょうね♪
コザって面白そうだけどとっつきにくい…と感じていた方にも、コザ在住で沖縄民謡歌手生活13年になる私、東京出身のKIKOが、コザらしい–食・音・遊び–をコザ愛たっぷりに選んでみましたので、これをキッカケにどうぞコザへの小旅行を楽しんでくださいませ〜。
クラウドファンディングから生まれたゲストハウスから、コザ旅スタート
コザ、コザと連呼してますが、コザも広い。気軽に旅していただきたいので、沖縄市の中心地・胡屋交差点近くの「ゲストハウスキャサリン」を拠点しての、徒歩で楽しめる範囲をご紹介します。
今回旅の拠点に選んだのは、コザの街づくりに情熱を燃やす有志が、クラウドファンディングから支援を受けて始動したゲストハウスキャサリン!
元々ゲストハウスだった部分と民家の一部をリノベーションし2016年末にオープンしたばかり!築年数はそれなりに経ってはいるものの、タオルなどの備品は新品が多く、空間が広々しているので快適です。沖縄市の中心市街地に1泊2,500円ほどで泊まれますから、ナイトライフも充実しているコザを楽しみ尽くすのにもってこいです。
壁のレンガが味ぐゎ~ある階段を登ると、建物2・3階部分がゲストハウスです。
二段ベッドが並んでいるようなゲストハウスの印象と違い、ドミトリールームでも狭苦しく無く広々♪ほかに個室もあります。
共用スペースの和室リビングには床の間まであり、外国の方に喜ばれそうです。ダイニングに置かれている電子ピアノは弾いて良いそうで、ミュージシャンのお客様にもいいですね。
ゲストハウスキャサリン
[住所] 沖縄県沖縄市中央1-15-11-2F
[電話] 090-2507-3436 (9:00~21:00)
[料金]2,500円~(女性専用ドミトリー、個室有)
※連泊、長期利用割引有
お部屋へ荷物を置いたら、さっそくコザの街へ繰り出しましょう!その際、もしお腹が空いているなら、ゲストハウス1階に位置する「台湾料理 凱莎琳(キャサリン)」で腹ごしらえするのもいいですね♪
名前でアレ?と思われた方がいたらコザ通ですね。そうです、ゲストハウスキャサリンの名前の由来であり建物のオーナーであるキャサリンママの営む台湾料理屋さんです。
コザで出会える本場台湾の味!「美食同源」メニューを楽しもう
台湾は花蓮のご出身で、那覇出身のご主人と結婚され、自然に行けば那覇に住みそうなものですが、コザの国際的な土地柄に惹かれてコザに住みたい!と主張したのだそうです。
コザに引き寄せられ30有余年。台湾家庭料理をベースとしたキャサリンさんの「美食同源」メニューからまずは台湾料理定番の大根モチとチマキ、そして美しく年齢を重ねているママさんにあやかろうと、薬膳スープをチョイスしました。
薬膳スープは固形分を除いてスープだけをいただく場合もあるそうですが、こちらでは10種類以上の薬膳の固い部分以外はすべて具として食べられるようにと入っています。なんでも昔から変わらないレシピだから1,000円では割が合わない贅沢さだそうで、それを聞いたらさらに薬効も上がるような気がして元気になりました!(笑)
台湾料理 凱莎琳(キャサリン)
[住所] 沖縄県沖縄市中央1-15-11
[電話] 098-937-9051
[営業時間]17:00~23:00(LO22:00)
[定休日]不定休
キャサリンビルの近くには、ペルー・フィリピン・タイと多国籍料理がいっぱい。徒歩2分で行けるゲート通り(空港通り)にはアメリカンなバーガー類を出す店もあります。ネーネーズのヒット曲「あめりか通り」に歌われているように、いろんな国の文化が流れ込んでいる街だということを実感できます。沖縄市には40カ国以上の出身の人が住んでいるらしいですよ!日本全体を見渡しても珍しいのではないでしょうか。
宿も決まり腹ごしらえもして、さて向うはコザの街へ!
コザの情報がほしいなら、迷わず沖縄市観光物産振興協会を訪れてみましょう。沖縄県で2番目にできたというスクランブル交差点、その角に立つミュージックタウンの1階、ゲート通りに面してあります。スタッフに質問すればいろいろ教えてくれますよ。
沖縄市観光物産振興協会
[住所] 沖縄県沖縄市上地1-1-1 1階
[電話] 098-989-5566
[営業時間]9:00~19:00、土日10:00~18:00
[定休日]祝日
ゲート通りをそぞろ歩けば、両サイドに英語表記の看板が立ち並び、異国情緒満点です。通りの端にある嘉手納基地第2ゲートが見えてくるあたりには、今は数えるほどに減ってしまった「刺繍屋さん」のTOP EMBROIDERY SHOPがあります。MA-1などのジャンパーに和柄や地名を刺繍で入れる「スカジャン」はファッションとして有名ですが、こちらでカスタムオーダーすることができます。
この通りで40年ほど営業を続けているこの店へ、その昔、第2ゲートからゲート通りへ繰り出してきたアメリカ人達がこぞってオーダーをしたことでしょう。コザへ来た時にそんな本物のスカジャンをオーダーするのも乙な遊びです(横須賀発祥だからスカジャンなのでしょうが個人的にはコザジャンだとおもいます笑)。ディスプレイされている刺繍のワッペンを買うこともできます。
ちなみに、お仕事のペースを乱したくないとのことで長くお話しを伺うことはできませんでしたので、ご紹介は軽くこれぐらいで。
ゲート通りは週末の夜になると、まさにアメリカに居るような気分になれます。嘉手納基地からたくさんのアメリカ人が遊びに出てきて、あちこちから聞こえてくるおしゃべりはリアルな英語です。
アメリカドルを普通に使えるお店がたくさんあります。
近頃はゴヤ一番街アーケードの中までアメリカ人で賑わう。
ベトナム戦争時代から続くロックを聴かせるライブハウスが連なるのもコザの特徴。写真のほかにも「JET」という有名なライブハウスも健在だ
戦後に嘉手納基地ができたことで、元々は農村だったこの地域に沖縄全土からも外国からも人々が流入してカルチャーが入り混じり、全国初のカタカナ市名「コザ市」となりました。娯楽も大いに発展して、特に音楽はアメリカンロックからジャズから、沖縄民謡から日本のフォークミュージックまでと、さまざまなジャンルの音楽で溢れるコザは、他にはない珍しい街に上げられるでしょう。
コザへ泊まりで遊びに来れば、盛んなナイトライフも心置きなく楽しめます。ゲート通りがアメリカ人中心なら、その隣にウチナーンチュ中心の繁華街、200軒はスポットがあるだろう広大な中の町社交街で飲み歩くことも一度は試す価値があります!
コザの繁華街、中の町で遊ぶなら民謡クラブはいかが?
そんな中の町にあって、コザから決して無くなってほしくない伝統的な遊びのひとつに民謡クラブがあります。筆者KIKOも毎週金曜日出演している「民謡クラブなんた浜」は1969年11月29日開店の、創業47年、おそらく沖縄でも屈指の古くから沖縄民謡ステージがある酒場です。
1980年代の大ヒット曲「肝がなさ節」は今や沖縄民謡の定番曲ですが、1964年頃の「なんた浜」のヒットから50年以上現役でステージに立ち続けている、なんた浜オーナー饒辺愛子ねえさんにお話を伺うことができました。
(撮影協力・ジャン松元)
まだお化粧してないから写しちゃダメ、と後ろ姿。お孫さんが居る年になっても、いつも元気で茶目っ気たっぷり。乙女のようです。
(撮影協力・ジャン松元)
初代のステージメンバーは国吉真勇・湧川明・喜友名朝幸・稲福政信・崎山千恵子・新垣直子・古謝美佐子、そしてその後ここで長らくステージを務めた嘉手苅林昌、松田弘一…(敬称略)などなどお話のなかで民謡界の重鎮の名前がポンポン出てくる。
47年間、ここコザの同じ場所で継続するのは並大抵のことではなく、「人の縁に恵まれて支えられてここまで来た」と愛子さんは云う。
「ヤマト(本土)には一期一会という言葉があるけれども、ウチナーではイチャリバチョーデー、出逢ったらもう兄弟なんですよ。わたしに言わせれば一期一生!」
沖縄のチムグクルを感じられる民謡クラブなんた浜という空間は、コザ騒動や日本復帰より前からここで営業をして、目まぐるしく変わる時代にブレることなくウチナー島唄の魅力を今だに伝え続けている。
「昔は沖縄芝居などもあちこち盛んにあったけれども徐々に減って行って。海外に散らばっているウチナーンチュが沖縄に帰って来た時に沖縄の文化芸能に触れたいと来店してくださることもあり嬉しい。アンスカ遠くからんメンセールムンヌ(あんなに遠くからもいらしていただけるのだから)、沖縄のみなさんももっと気軽に、素晴らしいウチナー島唄を一緒に楽しみにいらしてくださいね」
興が乗ればお客さんの飛び入りステージがはじまることも珍しくない。心の底から喜んで自由奔放に踊るカチャーシー曲ではハッとするような名人に出会うこともある。
歌は音楽として心を癒すだけでなく、民謡とは文字の通り民が謡ったもので、特に昔から伝わる民謡曲はヒトの心や人生の知恵がたっぷり込められたカプセルのようだ。
(撮影協力・ジャン松元)
民謡クラブというところはウチナー唄の魅力に留まらず、ウチナー文化、沖縄そのものの魅力までをも感じることができる場所だしメディアとすら言って良いのではないかと思う。だから筆者KIKOもここ13年居てしまって、ウチナーグチも話せるまでになったのでしょう。ウチナーグチを話す方が揃った時には90%はウチナーグチで会話がすすむ空間なのです。
民謡クラブ なんた浜
[住所] 沖縄県沖縄市上地1-15-12
[電話] 098-932-5930
[営業時間]21:30~翌3:30
[定休日]月曜日と木曜日、旧正月元日
各種島酒ボトル8,000円~、ビール1,000円
(ミュージックチャージ込み)
さてさて、民謡クラブなんた浜の真向かいではまた、ロックを中心としたオールジャンルの、ノリノリのバンド生演奏で長年人気がある「ジャンバラヤM.」さんがあります。飲みに出かけて興が乗って来たら、「ジャンバラヤへ行こう!」とタクシーで乗り付けるグループの姿をよく見受けます。気軽に生演奏の音楽で飲める場所がたくさんあるのは、とってもコザらしいこと!
レトロな内装や照明がアットホームな店内にホットな演奏
ところ狭しと踊りだすお客さんも伝統的な光景
25年間ここで唄っていた先代のカリスマ「ジャンバラヤマスター」が亡くなり、伝統の灯が消えるのかと心配されましたが、長年カウンターに居るミーカーさんが店を引き継ぎました。オールディーズ、ロック、ポップス、ジャズなどの往年の名曲カヴァーを中心とした以前と変わらぬ盛り上がりで、金曜日と土曜日に元気に営業中です!
ライブハウス ジャンバラヤM.
[住所] 沖縄県沖縄市上地1-16-3
[電話] 098-932-3930
[営業時間]22:00~6:00 ライブは24時スタートの5回ステージ
[定休日]日~木曜
ビールやカクテルなどドリンク各種はミュージックチャージ込みで一杯1,000円
沖縄の夜、たくさん飲んで歌ったあとの〆はやっぱり…
中の町に限らず、コザは夜遊び文化が盛んなようにおもいます♪ 飲む前後の定番グルメも発達しています。ヤギ刺・ヤギ汁、テビチの入った沖縄おでん、フーチバージューシー、シメのステーキ!
民謡クラブなんた浜の隣に2年前から、フーチバージューシーの名店「デコちゃん」が引っ越して来ています。飲んだあとのフーチバージューシーは体にやさしく最高ですよ!沖縄で一番おいしいと筆者KIKOが個人的に一押しの「おでん小町」も近くにあります。丁寧に煮込む味わい深いテビチのファンがあまりにも多く、忙しくなりすぎると困るということで取材をお断りされてしまいましたが、沖縄伝統の本物を味わいたい方は中の町中通りで探してみてくださいね。なんた浜などの酒場から出前も取れますよ♪
どちらも創業ウン十年、ウチナ~アンマ~の味、いつまでも変わらないでいてほしいものです。
コザんちゅに「シメのステーキはどこね?」と尋ねたら、かなりの確率で「サンライズホテル!」という答えが聞かれることでしょう。40年以上前に、アメリカ人の宿泊客向けに建てられたであろうこのホテルだからでしょうか、レストランの大きなステーキが有名です。
中の町社交街から大通りをはさんでスグ、飲んだ帰りにサンライズのステーキを食べに行くのはいかにもコザの風情。あちこちにアメリカンレトロを感じさせるホテルの、昔懐しい当時の本物のAサイン表示に迎えられます。
Aサインとは日本復帰前の沖縄で、アメリカ人が安心して利用できる基準を満たしているという営業許可証です。
時代の流れで、アメリカ人の他に中華系の観光宿泊客なども増えホテル業が忙しくなり、実は深夜のレストラン部門を一度止め、コザんちゅをガッカリさせていたのですが…那覇のステーキ屋さんがテナントに入り、サンライズステーキの伝統を継承しながら2017年3月から24時間営業を復活させるとのことです!
そしてさらに、ご飯とサラダがおかわり自由の1,000円ステーキもスタートするそうです。お年寄りからお子様までお腹いっぱいになってくださいとメッセージをいただきました。
サンライズレストランステーキの顔、350gのダイナミックステーキも継続!
アメリカンなこのホテルらしく、ホテルの食堂の隣に渋いラウンジもあります。アメリカ人で賑わっていただろう年季の入ったバーカウンターで、アメリカ世―に思いを馳せながらステーキをいただくこともできますよ。
サンライズレストラン
[住所] 沖縄県沖縄市胡屋2-1-46
[電話]098-933-0171
[営業時間]24時間
[定休日]なし
最後にご紹介するのはコザから未来を作る、最先端のコワーキング施設
県外からの観光地としてはややメジャーでなく、生活と密着しているコザだからこそ、ではないですが、気軽旅行中にチョット仕事もこなしたい、という希望にこたえる場所もあります。それはゴヤ交差点近くのゴヤ一番街の中にある「スタートアップカフェコザ」。
映画館のような入口におしゃれな内装、カフェといってもカフェにあらず。起業創業・スタートアップの相談窓口であり、プログラミング講座が行われていたり、電源・Wi-Fi完備の無料コワーキングスペースを利用できたりします。
ノートパソコン一台持って、コザ遊びの途中に立ち寄りお仕事…なんて現代的!宿泊のゲストハウスキャサリンからも目と鼻の先にあります。ここではクラウドファンディングプラットフォームのCAMPFIREと連携をはじめており、実はゲストハウスキャサリンはその最初の成功例なのです。
コザの街中では、こんな最先端とコザ伝統の文化とが有機的にからまって、新しい何かが生まれる気配がヒシヒシと感じられます。
STARTUP CAFE KOZA
[住所] 沖縄県沖縄市中央1-7-8
[営業時間] 12:00~21:00(相談受付は19:00まで)
コザ愛たっぷりにコザのエッセンスの一部をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。以前は閑散とした雰囲気が感じられるときもありましたが、出生率上位の常連でもある沖縄市は今、若者が経営するオシャレな店などもどんどん増え、昔とはまた違った形で盛り上がりを見せています。
コザはナイトライフばかりではなく、中心地のゴヤ交差点から徒歩圏に、家族連れが楽しめる場所もあります。
全島エイサーまつりの会場であるコザ運動公園は、琉球ゴールデンキングスなどのプロスポーツイベントも盛んですし、ランニングの利用は自由、弓道場や剣道場の貸出もやっていて、市外・外国の方でも利用が可能です。テーマパーク沖縄こどもの国には、動物園と科学・芸術・哲学をテーマにしたミュージアムがあり、一日居ても飽きないですよ。
どちらの近くにもファミリーマートの店舗があり、青空の下で食べるお弁当の買い出しなどに立ち寄ってから向かうのもいいですネ〜。
沖縄本島のほぼ中央に位置するので、どのエリアからでも比較的出かけやすいレトロと先端がほどよく融合したコザの街、あまり馴染みのない方はぜひ足を運んでみるのはいかがでしょうか。
ライター:KIKO(沖縄民謡歌手)
HP:https://www.facebook.com/kikogwa